第20話「七つの光、一つの願い」

七つの鍵が放つ光が、どどらんど全体を包み込んだ。
皆が手を繋いで作った輪の中心で、扉が完全に開いた。そこから溢れ出す光は、温かく、そして力強かった。
「これが……浄化の光」
ユキが呟く。
影の獣たちが一斉に襲いかかってきた。赤い目を爛々と光らせ、鋭い爪を振りかざして。
「だまぁ!」
だまよおが正義の鍵の力を解放する。
「皆の平和を守るんだ!」
正義の光が、最前列の獣を押し返した。
「私も!」
くぴぃが七つ目の虹色の鍵を掲げる。
「もう逃げない!」
虹の光が、空に大きな壁を作った。
えうんとミオは、共有する鍵を一緒に持った。
「ミオちゃん」
「うん、一緒に」
二人の絆から生まれた光が、他の光と混ざり合っていく。
おひーんは、記憶の鍵の力を水に込めた。
「先祖の記憶よ〜、力を貸して〜」
水が光の粒子となって舞い上がる。
A氏とB氏、そして三つの光となった失われた種族たちが、振動を発し始めた。
『植物ヨ……応エヨ……』
『生命ノ……調和ヲ……』
すると、どどらんど中の植物が応答した。
木々が揺れ、花が開き、草が歌うように震えた。全ての植物から、小さな光が立ち上る。
「すごい……」
ミオが息を呑む。
植物たちの光と、七つの鍵の光が一つになった。
巨大な光の柱が、天に向かって伸びていく。
影の獣たちが、光に触れた瞬間、変化が起きた。
黒い体が少しずつ薄くなり、その中から別の姿が見え始めた。
「あれは……」
小さな光の粒子。それは、元々は生命エネルギーだったもの。
『痛ミ……苦シミ……閉ジ込メラレテイタ』
影の中から、声が聞こえてきた。
『助ケテ……』
「影も、苦しんでいたんだ」
えうんが理解した。
「封印じゃなく、解放が必要だったんだ」
皆の光が更に強くなった。
しかし、影の獣たちも必死に抵抗する。
黒い煙を吐き、光を押し返そうとする。
「負けるな!」
だまよおが叫ぶ。
「皆で力を合わせるんだ!」
その時、えうんは思い出した。
A氏とB氏と初めて会った時、作った笛のこと。
「音だ!」
えうんは笛を取り出した。
「音も振動も、全て繋がってる!」
笛の音が響き渡る。
澄んだ音色が、光と共鳴した。
「私も!」
ミオが歌い始めた。染め物をする時にいつも歌っていた歌。
くぴぃも、だまよおも、それぞれの声を上げた。
おひーんは、水面を尾で叩いてリズムを作る。
A氏とB氏の振動と、皆の音が一つになった。
<どどらんどの歌>
それは、言葉ではない、心の歌。
全ての生命が持つ、根源的な響き。
影の獣たちが、動きを止めた。
そして、一体、また一体と、光に包まれていく。
黒い体が溶けて、中から美しい光の生き物が現れた。
蝶のような、妖精のような、不思議な姿。
『アリガトウ……』
『ヤット……自由ニ……』
解放された存在たちは、空に舞い上がっていく。
最後の一体が浄化された時、七つの鍵が静かに地面に降りてきた。
扉は閉じたが、その光は皆の心に残っていた。
「やった……」
くぴぃが、へたり込んだ。
「本当に、やったんだ」
だまよおも、珍しく疲れた顔を見せた。
えうんとミオは、お互いを見つめて微笑んだ。
「終わったね」
「うん」
A氏とB氏は、三つの光と向き合っていた。
『仲間……生キテイタ』
『一緒ニ……故郷ヲ……再生デキル』
三つの光が、A氏とB氏の周りを優しく回る。
『共ニ……行コウ』
ユキが、七つの鍵を集めた。
「これは、もう必要ないかもしれない」
「いや」
えうんが首を振る。
「きっと、また必要になる時が来る」
「そうだね〜」
おひーんが同意する。
「歴史は繰り返す〜。でも〜、今度は皆で立ち向かえる〜」
夕日が、どどらんどを金色に染めていた。
戦いは終わったが、これは新しい始まりでもあった。
「ねぇ」
くぴぃが言った。
「これからも、ずっと友達だよね?」
「当たり前だろ!」
だまよおが笑う。
「そうよ」
ミオも頷く。
「ずっと一緒」
えうんも微笑んだ。
A氏とB氏、そして三つの光も、この輪の中にいる。
全ての種族が、一つの家族のように。
その夜、どどらんどでは祝祭が開かれた。
マメキン種も、エウニカ種も、クーコ種も、ヒポメ種も、皆が集まって。
たき火を囲んで、歌い、踊り、笑い合った。
えうんは、ふと空を見上げた。
星が美しく輝いている。
「どこかで、また何かが起きているかもしれない」
ミオが隣に来た。
「でも、大丈夫」
「うん」
二人は手を繋いだ。
「皆がいるから」
遠くの空に、流れ星が一つ。
それは、新しい来訪者の予兆かもしれない。
でも、今は関係ない。
今は、この平和を、この幸せを、噛みしめていたい。
<エピローグ>
数日後、ユキが皆を集めた。
「実は、気になることがあるの」
「なに?」
「浄化された影たちが向かった方向……あそこに、別の世界への入り口があるかもしれない」
皆が顔を見合わせた。
「もしかして……」
「ええ。いずれ、私たちも行くことになるかもしれない」
えうんは、七つの鍵を見つめた。
まだ、物語は終わっていない。
これは、第一章の終わり。
そして、新たな冒険の始まり。
どどらんどの日常は守られた。
でも、より大きな世界が、彼らを待っている。

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